涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


視界が涙で霞んだ。


「夕…… 凪……」


遠ざかる背中に、震える声で呼びかけた。



夕凪が足を止めた。

クルリと体の向きを変え、その直後に衝撃音を聞いた。



「キャア!」

と悲鳴を上げたのは、佐伯さんだった。



夕凪が佐伯さんの前に立ち、

怒りの籠もる拳を、彼女の顔横の壁にぶつけていた。



さっきまでニヤニヤしていた佐伯さん。

今は戸惑う顔して、夕凪を見上げていた。



夕凪が、怖い声で言う。



「最低なのは……
佐伯、お前だよ」



佐伯さんは「はあ?」と、声を上げた。

納得いかない目を吊り上げる。



「何で私が最低なのよ!
写真見たでしょ?

彼氏がいるのに上條ともあんなことして、

最低なのは、朝比奈さんじゃない!」



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