涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


「左足の膝から下は、損傷が激しく……やむなく切断しました。

全力を尽くしましたが、足を残してあげることが出来ませんでした」




母は青ざめ、父は呻いた。


私は……
言葉の意味が上手く理解できなかった。



切断?

切断って……何?

夕凪の足を……切ったの?



頭に浮かんだのは、今朝の夕凪の姿。


もうすぐ千葉大会があるから、
今まで以上に真剣に波に挑んでいた。



『潮音も見に来いよ!
絶対、優勝してやる!!』


そんな大きなことを宣言し、


『来年は、プロトライアルに挑戦だ!』

と目を輝かせていた。



左足の切断……


サーフィンは……

夕凪の夢が詰まったサーフィンは、どうなるの?




一礼して医師が去って行き、
私達は廊下に取り残された。



夕凪の生還に喜んだ心が、厳しい現実にさらされる。



座り込んだまま、呆然と手術室のドアを見つめていた。



夕凪からサーフィンを奪ったら、

夕凪はこの先どうなってしまうのか……


再び恐怖に襲われる。

嵐の予感がしていた。




――――……




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