涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


「夕凪のお母さん!」


エレベーター前で呼び掛ける。

母親は追ってきた私を、怪訝そうな目で見た。



「夕凪は今、心を閉ざしているけど、

いつか……

いつか夕凪と、夕凪の赤ちゃんと一緒に、会いに行きます。

それまではどうか、遠くから見守って下さい。お願いします!」




夕凪がいつか親になれば、母親の気持ちも理解できるかも知れない。

そう思い言った言葉は、彼女を驚かせたみたい。



驚いてそれから、涙を一粒こぼした。


母親の泣き顔は、どこか夕凪に似ていた。



「夕凪をよろしくお願いします」



私に向け深々と頭を下げる母親の姿が、

エレベーターの扉が閉まり、見えなくなった。




今すぐは無理でも、
いつか、親子の関係を修復してあげたいと思う。



血を分けた親子だから、

いつか、きっと……




――――……





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