路地
美織はまた路地に立っていた。


何故？


美織は何度となく繰り返される、この悪夢と言うべきなのかそれとも白昼夢なのか……。何れにしても夢とも現実とも思えないこのパラレルワールドへと美織は繰り返し引き戻されるのだ。


しかしながら、美織はこの場所をよく知っていた。そして何故ここへ自分が何度となく来なければならないのかも……何となく分かっていた。


美織は一つ深く呼吸すると鉄工所の入り口脇に置いてある錆びたドラム缶に近づいた。


ドラム缶は2つあり、そのどちらにも鉄の切れっ端が山になるほど詰め込まれていた。美織は一方に手を掛けそのドラム缶を倒そうと試みた。


しかし、切れっ端と言えど山となれば重量もそこそこで、元よりドラム缶自体がかなりの重さを占めている。


ビクリともしない。


一旦、手を離すと両手のひらをまじまじと見つめた。ドラム缶の錆が手に付き赤茶色していた。そっと臭いを嗅ぐと鉄特有の少し血にも似た生臭さを感じる。


美織は今一度、ドラム缶に手を掛け倒そうとした。


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