涙があふれるその前に、君と空をゆびさして。


たまらなくなったレイが私の手をひいて、強く抱きしめる。


レイの力強い腕に、ぬくもりに、心が震えた。


今はこうして生きてるレイが、

いつか冷たくなって死ぬ日がやって来るの……?


信じられない。信じたくない。


いつか、レイがいない世界がやって来るなんて。


過ぎていく一秒一秒が尊くて、重い。


このレイといる一瞬一瞬を大切にして行きたいと、心から思った。


生きてることは、キセキ。



「本当は病気のことは隠してサクとずっと一緒におる気やった。……でもあの日、倒れた俺を見て号泣するサクを見て、離れないかんて……思った」



耳もとでするレイの声。


レイが死んだら、この声も聞けなくなる……?



「その時先生からいつ俺の心臓が止まってもおかしくないって言われた。運動は自殺行為だってすっげぇー怒られた」



笑い声が、震えてる。


< 228 / 259 >

この作品をシェア

pagetop