晴れ、時々、運命のいたずら
「第14回、仲多度郡(なかたどぐん)ちびっこのど自慢大会、いよいよ優勝者の発表です!」
司会者がステージの上から大袈裟に客席に向かって叫ぶ。
ステージ上には幼稚園児から小学6年生まで、男の子、女の子計8人がそわそわと落ち着きなく並んでいる。
とある公民館で、1年に1回行われるのど自慢大会。
「優勝者は!」
会場中に派手な音楽が流れる。
「3番の徳島有紗(とくしまありさ)ちゃんです!」
司会者に促されて、一歩前に出る。
「有紗ちゃん、おめでとう。」
「はい、ありがとうございます!」
有紗は信じられないと言った表情を浮かべながらも、口元に笑みがこぼれている。
「有紗ちゃんはこの大会、なんと3連覇ですね。気分はどうですか?」
「本当に嬉しいです!」
「まぁ、有紗ならこれくらい当たり前だね。」
舞台の袖から、母親の徳島千夏(とくしまちなつ)がニヤケながら呟く。
「徳島有紗。12歳。小学6年生…。」
手に持っている出場者のプロフィールを読みながら、山形直美(やまがたなおみ)は目線をステージに移した。
「どうされましたか?社長。」
隣で島根浩志(しまねひろし)がステージを見つめたまま微動だにしない直美の顔を覗き込んだ。
「島根。」
「はい。」
「あの子…。」
有紗を見つめたまま問いかける。
「ダイヤの原石かしら?」
「徳島有紗、の事ですか?」
「そうよ。」
島根はステージ上で少しはにかんでいる有紗を見つめて1つため息をついた。
「社長は、原石だと思ったからわざわざ香川県まで来たのでしょう?」
「…そうだったわね。」