不器用なシンデレラ
「鷹野、ここは僕に任せて。早く山下さんを送ってあげて」

「すみません。ありがとうございます」

 理人くんは本田さんにお礼を言うと部長さんから手を離し、すぐに屈んで私を抱き上げた。

「理人くん・・またスーツ汚れる。私、スーツお酒で濡れてて」

 私は理人くんの腕から離れようとするが、彼はそれを許さなかった。

「構わない。黙ってて。俺、いま気が立ってるから。本田さんがいなかったら、あのエロ部長ボコボコにしてた」

 確かに、まだ理人くんの身体からは殺気を感じる。

「・・・また心配かけてごめんなさい」 

「電話から一方的な会話だけ聞こえてきて・・間に合わなかったらどうしようって不安で死にそうだった」

 いつも冷静な理人くんが少し感情的になって私の身体をぎゅっと抱き締める。
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