不器用なシンデレラ
 いつものクールな顔で平然ととんでもない事を口にすると、理人くんはスマホを操作してタクシーを呼ぶ。

「あの・・私・・今夜はここに」

「そんなに待てないほど俺が欲しい?だったら今から続きする?」

 理人くんが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 なんだか人格変わってないですか?

「・・・いえ、理人くんのお家に行きます」 

「帰りますだよ。親父もお袋も可愛い娘が出来たって喜んでるから」

「・・・・」 

 なんだか思わぬ方向に話がいってるような気がするのは気のせいだろうか?

 大好きな人達に娘と思われるのは嬉しい。

 でも、理人くんに他に大事な人が出来て家を出る時、私はきっと後悔するし立ち直れないだろう。

 理人くんの私への気持ちはきっと一時的なものだ。

 祖母が亡くなった私を憐れんでいろいろ心配してくれて・・・。

 同情を愛情と勘違いしてるんじゃないだろうか。

 そう思うと気持ちは複雑だった。
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