不器用なシンデレラ
「本田さん、俺のコート、山下さんにかけてもらえます?」

「おお、悪い。それにしても、安心しきって寝てるな、この子」 

 本田さんは花音にコートをかけると、彼女をの寝顔を覗き込む。
 
「もうちょっと警戒心持って欲しいですけどね」

 俺は苦笑する。

「送り狼になるなら、ちゃんと責任取れよ」

 本田さんがここぞとばかりに俺をからかう。

「要らぬ心配ですよ。今夜はありがとうございました」

 冷ややかに言って、タクシーに乗り込む。

「成城までお願いします」
 
 車中、花音はまだ寝ていた。

 ビールを飲み過ぎたのもあるが、週末の疲れが溜まっていたのかもしれない。

 雅代さんに会うのは何年ぶりだろう?

 隣に住んでいるのにな。

 タクシーが花音の家の前に停まる。
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