不器用なシンデレラ
「・・・違う。この女が誘って来たんだ」

 往生際の悪い奴。

 こういう馬鹿な奴に限って素直に自分のやった事を認めない。

 虫けらを見るような目で見下すと、まだ怯えている花音と男の間に入り、そのまま片手で男の体を持ち上げた。

 怒りで体中麻痺してるのか、全然重さを感じない。

 このまま空中に放り投げてやろうか。

 今の自分なら出来る。

 そんな気がした。

 中年男がそんな俺の底知れぬ殺気を感じたのか震える。

「うちの山下はそんなことしませんよ。それにあなたが何をしようとしてたのか、その電話で会話が聞こえてきましたから言い逃れはできませんよ」

 冷たく言い放つと、近くにあった花音の携帯に目をやった。

 本当に馬鹿な男だ。
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