不器用なシンデレラ
「さっき花嫁の控え室覗いて来たんだけど、花音ちゃん、めちゃくちゃ綺麗だったよ」

「俺はまだどんなドレスか知らないんですよ。お袋がしっかりガードしてて見せてくれないんですけど」

 俺が時間が取れたから衣装合わせに一緒に行くと言うと、お袋が反対したのだ。

 写真も親父とは見てるくせに俺には絶対に見せない。

 何を隠してんだか。

「実の息子より嫁の方が可愛いんだね。まあ、そんなふて腐れた顔するなよ。今日はお前に渡したいものがあってさ。週末に圭吾の部屋整理してたらこれが出てきたんだよね」

 そう言って、大貫先輩がある1冊の本を俺に差し出す。

 それは、圭吾が高校生の時にいつも見ていた雑誌。

 表紙はスペインのアヴィラの城壁だ。

 やっぱり、あいつこの城壁をイメージしてこのレストランを設計したんだな。
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