不器用なシンデレラ
 ふらふらしながら薬のある棚まで歩く。

 保健の先生はいないけど、メモを残せば良いだろう。

 引き出しから薬を出すと、背後に誰かの気配を感じた。

「さっきの見てた?」

 低い男子の声。

「え?」

 振り返るとそこには、なんとなく見覚えのある顔。

 こんなにカッコイイのに何で名前出てこないんだろう?

 制服のネクタイの色からするとたぶん3年の先輩だ。

「さっきの見てたかって聞いてんの?」

「衝立があるから見えるわけないでしょう!」

 イライラしながら言うと、目の前の男子はクスッと笑った。

「つまり何があったかはわかった訳だよね」

「・・・・。あなたの名前も知らないし、心配しなくても誰にも言いません」 

「俺が誰だかわからないの?・・・ああ、そうか」 

 先輩は1人納得したように呟いて、胸ポケットから眼鏡を取り出してかける。
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