不器用なシンデレラ
 でも、今の私はどこに行けばいいんだろう。

 明日、どんな顔して会社に行けばいいんだろう。

 何かにすがるようにピアノに触る。

 ピアノは正直だ。

 私の滅茶苦茶な感情が音となる。

 これは、酷い。

 子供たちにも聞かせられない。

 でも安田先生の存在も忘れ、1時間近く闇雲に弾いた。

 最後に弾いたのはショパンの『別れの曲』。

 パパが私に聞かせてくれた曲。

 思い出の曲だ。

 今の自分の感情を吐き出すかのように弾いていると、突然あるはずのない声がした。

「下手くそ」

「・・・・」

 え?

 驚きで手が止まる。
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