おててがくりーむぱん2

3



光恵はあまりの悪意に、頭がくらくらしてくる。こんなに大勢の人から憎悪を向けられたことなんて初めてだ。


「佐田孝志と付き合うために、脚本家になったんだよ」
「劇団見に行ったことあるけど、佐田孝志が演じたからよかっただけで、作品は普通だったし」
「付き合ってすぐ仕事を辞めちゃったのが、何よりの証拠っしょ」
「この程度の女が、佐田孝志と並べるなんて、思い上がりじゃない?」


言葉のひとつひとつが胸をえぐる。


違う。
そんなことない。


どんなに叫んでも、ネット上の人々には伝わらない。


「作品は普通」


確かに孝志が演じてくれたから、すばらしい舞台になった。
でもこんな風に言われるなんて。


もうあきらめたと思っていた夢の破片が、光恵の心に無数の傷を作る。


食べて行けない仕事を続ける勇気がなかった。
だって、どうやって生きていくの???
文章を書き、物語を紡ぐ、そんな自信はとっくに失われていた。
普通におもしろいじゃ駄目なの。
人を自分の世界に巻き込める、そんな特別な才能がないと、職業として成り立たない。
わたしにそれがあるって、どうやって信じろと?

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