おててがくりーむぱん2


耳が破れてしまうほどの歓声。
カメラのフラッシュが、目の奥を刺激した。


「イメージキャラクターの佐田孝志さんです」
「こんにちわ、よろしくお願いします」


孝志がステージ中央で頭を下げた。


ビジネススーツを着こなし、つやつやの黒髪が耳にかかる。
MCの女性に促されるまま、中央の背の高いスツールに腰掛けた。
長い足を軽く前に出し、それから客席に笑顔を向ける。


黄色い声が上がった。


孝志。


光恵は胸のところで拳をぎゅっと握りしめ、心臓がばくばくするのを悟られないようにする。久しぶりに見る彼の姿に、涙が出てきそうになった。


彼はステージに立つと、どうしてこんなに輝いているんだろう。それに比べて光恵は、うつむいて、おびえて、彼の姿を一目でも見ようと、必死になっている。


彼の仕事の邪魔はしてはいけない。
彼からこの仕事を奪ってはいけない。


彼を愛してるんだ。
心から。
とても。


光恵は溢れてくる涙を拭うため、眼鏡を取る。


そこでステージ上の孝志と目があった。


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