おててがくりーむぱん2


「彼女と結婚したかった。普通に、幸せに、祝福されて。でも誰からも認めてもらえなかったんです」


顔をあげると、佐々木が飲みながら、じっと孝志を見つめている。


「なんででしょうね。意味がわかんないです」


「時には、流れってあるんだよ。ほら、泣いてないで飲めって」
「流れ?」
「流れに逆らっても、決壊するだけ」
「……」
「皆に反対されてうまくいかないのなら、今は彼女と結婚する時期じゃないってことだ」
「……でも……」
「自然とやってくるよ、そのタイミングが。無理をしなくても、我を張らなくても、なんだかいつのまにか一緒になっていたっていう、そんな時期がくる」
「……そうかな」
「そうさ。まだお互い、それぞれにやらなくちゃいけないことが、あるってことだ」


孝志はグラスを手にとって、再び口をつけた。


「おまえがこんなだから、いいチャンスかと思ってさ」
佐々木は笑いながら話しかける。


孝志は首をひねる。


「俺、海外で勝負してみようと思ってんだ」
孝志はびっくりして、背筋を伸ばす。


「ほんとですか?」
「ああ」
「だって、奥さんいるでしょ? 一緒にいくんですか?」
「行かないよ。あいつには日本で仕事がある」
「寂しいじゃないですか」


孝志がそう言うと、佐々木はにんまりと笑顔を作る。

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