おててがくりーむぱん2
ゆるやかな時の流れのなかで


「ああやばっ、遅刻しちゃう」
光恵はコンピュータの電源を慌てて落とすと、キャンバス地の鞄に放り込む。冷蔵庫の上に置いてあった食パンを、焼かずに口に入れて、猛ダッシュで化粧をした。


最近、お化粧ののりが以前とぜんぜん違う。


「うう、パウダーの限界」
光恵は塗っても塗っても消えないシミに眉をしかめながら、それでも最善の努力を尽くした。


部屋を走り出すと、バスの出発まであと二分。
急げ!


ふうふう言いながら、バス停に向かって走ると、遠くにバスの影が見えた。


バス停到着と同時に、バスも到着。


「間に合った」
はあはあ言いながら、思わず口に出す。


バスの一番奥の座席に座ると、間を惜しんでコンピュータを開ける。
締め切りはもう目前。
間に合わなかったら、アウト。


期間限定ネットムービーの脚本を書き出した。


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