おててがくりーむぱん2


「はあ?」
母親の口があんぐりと開いた。


「ばれなきゃいいよね?」
孝志はにこっと笑うと、グラスに手を伸ばしかけた。


「あんた、馬鹿じゃないの?」
母親の大声が部屋に響いた。
孝志はびくっとして、のばしていた手を引っ込める。光恵も思わず首をすくめた。


「ばれないわけないじゃない。本当にどうしようもない……」
母親が溜息をついた。


「結婚すれば、家族の行事がある。もし子供ができたらどうするの? 子供のイベントには一切あんたは出ないってことよね? 光恵さん一人で子育てするってことよ? だいたい世間にばれたとき、許してもらえると思ってる? お仕事もらえなくなったら、どうやって生活していくつもりなの? 光恵さん!」


光恵は突然呼ばれて「は、はい!」と声が裏返った。


「お仕事は何をされてるの?」
「はい、あ、あの……塾の講師を……」
光恵が小声でそう答えると「違うよ!」と孝志が横から入って来た。


「ミツは脚本家なんだよ。いい作品書くんだ。でもまだちょっと収入が安定してないから、講師のバイトしてるだけ!」
「じゃあ、あんたが無一文になったとき、光恵さんが家族全員を養うってことは、できないのよね?」
母親はずばっとそう言った。


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