木曜日の貴公子と幸せなウソ


作品展の物は自分のクラスに置いてあり、職員室で作業をするとなると、それらを持ってこなければならなくなる。

また作業が終われば、自分のクラスにそれらを戻さなければならない。

夏江の言う通り、自分のクラスで仕事をした方が無駄がない。


「……本当は他に理由があるんでしょ?木曜のこの時間帯に出たくない理由が」

「……」


あるよ……。

木曜日のこの時間帯は、先輩がエミちゃんをお迎えに来る。

会ってしまったら、何を言われるかわからない。


「ねえ、萌。何も聞かないでおこうって思ったんだけど、運動会終わってからずっとおかしいよ」

「おかしい?」

「あまり笑わなくなった」

「……え」


夏江に言われて、私は自分の顔を両手で包み込んだ。

いつも、子どもたちの前で、普通に笑っているつもりだった。

無理に笑っているつもりは全くなかった……。

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