木曜日の貴公子と幸せなウソ


「萌はオレの言葉より、周りの噂を信じた。そして、オレの事を捨てた。……正直、あんなに心も体も空っぽになるとは思わなかった。それほど萌を可愛くて、本当に本当に好きだと思っていたからなんだと、実感した」

「そんな……。じゃあ私は逆に先輩を……」


私の言葉を遮るように、先輩は片手をあげた。

そして首を横に振る。


「再会した時、萌が幼稚園の先生になっていた事にも驚いたけど、オレが思い描いていた笑顔でエミと接していたから本当にびっくりした。ああ、やっぱり天職だったんだと。でも、オレの事を忘れて幸せそうに笑っている萌に意地悪したくなった。……片山笑美の母親、片山千夏はオレの実の姉だよ」

「……えっ?」

「だから、エミはオレの姪っ子。エミはオレの子じゃないって言ったのに、本当に面白い発想したよね、萌は」


エミちゃんのお母さんが……先輩の実のお姉さんだった……?

そして、エミちゃんは先輩の姪っ子……。


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