木曜日の貴公子と幸せなウソ


「あー、うん、いいんじゃないって……」

「へー。まあ、来月から先輩は学校に来なくなるもんね」


何とか笑顔を作って答えた。

リサは納得したようにうなずく。

……先輩に言うわけないじゃん。

部活に入れば、1人で思い悩む時間が減るかなって思っただけだもん。

そんな不純な動機で入部するとか、口が裂けても言えないけど。


遊ばれて捨てられただなんて、考えたくなかった。

先輩と一緒に過ごした時間が偽りで、それに喜んでいた自分の存在を消したかった。

最初からなかった事にしたかった……。



幸いなことに、先輩と付き合っていた事を知っているのは、リサだけ。

先輩が登校しなくなり、卒業してしまえば、なかった事になる。




1月31日の夜。

私は、先輩との唯一の連絡手段だったケータイを、お湯でいっぱいのお風呂の中に落とした。


これですべて、終わり……。


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