ちっぽけな距離
「一ノ瀬‼︎」
「おう‼︎」

一ノ瀬にパスが渡る。

一ノ瀬は素早く人を次々に交わしていく。

すげえな…。

今多分、俺と一ノ瀬が勝負したら確実に負ける。

そして一ノ瀬はシュートした。

ピーッ‼︎

ホイッスルが鳴る。

「ナイス‼︎一ノ瀬ー‼︎」
「空すげー‼︎」

と、チームから声をかけられる。

一ノ瀬…めっちゃ輝いてるな…。

それから一ノ瀬は後三点、シュートを決めた。

まぁ、ハットトリックはあいつにとって普通か。

練習試合も終わり俺はベンチから立ち上がる。

そういやあずからまだ連絡ないな。

あいつどこでなにやってんだか。

迎えに行くか…。

「京‼︎」

…。

一ノ瀬に呼び止められる。

「…ん⁇」

一ノ瀬は走って俺の元に来た。

「どうだったか。面白かっただろ⁇サッカー」
「あぁ。そんなの知ってるよ」
「そうだよな。楽しいぜ、サッカー」
「…悪く無いんじゃない⁇」
「…叶わないとか、願いまで近づかねーと叶わねーよ⁇」
「だからなに。俺はもういいんだよ。今の生活でいっぱいなんだ」
「…そっか。お前も色々あるんだな」

俺は足を踏み出す。

すると後ろから

「また来いよ‼︎」

と、聞こえた。

…。

「そうだ一ノ瀬…」

俺は軽く振り返る。

「ん⁇」

一ノ瀬は笑って俺を見る。

「お前なら…いけるかもな」

そう言って俺は教室を目指した。

…きっと。

あの時の夢、一ノ瀬なら叶えられる。

『なぁ‼︎京‼︎』
『なんだよ空』

中学の時、俺は一ノ瀬のことを空と言っていた。

『俺達で最強チーム作ろうぜ‼︎』
『チーム⁇』
『そう。やっぱ将来はサッカー選手でしょ。そのためにすげーチーム作んの』
『へぇー』
『とりあえず俺達2人な⁇フォワードっ。あー、サッカー選手なりてー』
『だな。俺も興味あるかも』

中1の頃だった。

『だろっ‼︎⁇今日から11人‼︎みんな一緒にサッカーやろーぜ‼︎これからも一緒にさっ』
『あぁ‼︎』

こんな約束、叶えられなくてごめんな。
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