アルマクと幻夜の月

*第二夜 5*


「おいっ! 待てよ!」


息を切らして叫ぶアスラに、遥か前を走るシンヤは「しつこいぞクソ女!」と叫び返した。


「く、くそ……!? 失礼だぞクソガキ!」


「女がクソとか言ってんじゃねぇ!」


「はぁっ!? 女だ男だは関係ないだろ!」


口汚く罵り合う声に、道行く人々が眉をひそめる。

そのアスラの上空をカラスになって飛んでいたイフリートは、ため息をつきたい心地になった。


「おまえは本当に王女か」


 と、心底疑わしげに言ったイフリートに、アスラは「うっさい!」と怒鳴り返す。

長い時間走っているせいか、その顔は真っ赤だ。


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