アルマクと幻夜の月

部屋の片隅、積み上げられた本のすき間から、小さな金色がのぞいているのをアスラは見た。


長く放置されているはずなのに一点の曇りもない、眩しいほどの、金色。

まるで、この世のものではないような。天から与えられたかのような。


(なんだ、あれ)


訝りながらも抗いがたい衝動に駆られて、アスラはゆっくりとその金色に近づいていく。


周りに無造作に積まれた本をそっと押しのけて、そこから現れたのは。


「……水差し?」


持ち上げてみると重いが、当然ながら水が入っているような感じはしない。

造作自体は単純な、どこにでもあるような水差しだ。

――ただ、すさまじく眩い。
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