アルマクと幻夜の月

*第一夜 5*

金の水差しを誰にも見つからないように寝台の下に隠して、アスラはその日一日をずっと自室にこもって過ごした。


いつもならじっとしているのは性に合わないと言って王宮内を駆け回るアスラがえらく大人しいのを、ルトはひどく心配していた。

だがそのうち、ベネトナシュの王子に出会わないように気をつけているのだろうと結論づけたのか、

ときどきアスラの部屋に飲み物を持って来ては、さりげなくベネトナシュの王子の様子を伝えてくるようになった。

アスラにとっては好都合だったが、ルトに隠し事をしているのは心苦しかった。


自室でじっとしているのはアスラにとって本当に久しぶりで、いつもより時間の流れが数十倍も遅く感じる。

時に窓から城下の街の様子を眺め、時に部屋にあった本を適当に読んで時間をつぶし、――そうして、夜更け。

ようやく王宮内の誰もが寝静まった頃。
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