アルマクと幻夜の月



だが、シンヤに捕まった子供が手に持っていたのは、短剣だった。


――それも、血に濡れた。



サッと、シンヤとイフリートの顔色が変わる。


二人は同時にアスラを見て、息を呑んだ。



イフリートの胸の中にすっぽりと収まったアスラの右の腿に、真っ赤な血がにじんでいる。



衣装が邪魔で傷は見えないが、じわじわと広がる赤が、傷が決して浅くはないことを示していた。




わけもわからず呆然としているイフリートの視線の先で、

シンヤに右腕を掴まれた子供が、左手に持った短剣をアスラに突きつけて言う。




「――この人殺しの魔人使い! おまえのせいで父ちゃんは死んだんだ!」




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