アルマクと幻夜の月

*第三夜 5*


「なんで、」


水晶窟にたどりついたアスラは、洞窟の入り口に立つ二人を見て、苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。


「おまえたちがここにいるんだよ」



据わった目は目の前に立つ男を睨みつけている。


睨まれているのに、にこにこと場違いな笑みを浮かべる金の髪の男――キアンは、現れたアスラにかるく手を振った。



「やぁ、待ってたよ」


キアンが言うと、隣に立つリッカは小さく会釈をした。



「やぁ、じゃないだろ。こんなところで何してる」


「どこかのお姫様が水晶窟探検に出かけるって聞いて、僕もまぜてもらおうと思ってね」


「だから姫って呼ぶなって……」



盛大に舌打ちをかまして、アスラはため息をついた。



「ついて来るなよ。おまえ一応王子なんだから、こんな危ないところ入らないほうがいい」


「そう言う君も王女だけどね」


「あたしにはイフリートがいる」



それに、王女だとしても王宮を出奔した身だ。とは、言わないでおいた。


この男に自分のことを多く話すつもりはなかった。



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