アルマクと幻夜の月

*第一夜 7*


扉を軽く叩く音で目が覚めた。


ぼんやりとする意識の中、自室の扉の向こうから「姫様ー?」と呼ぶ声が聞こえる。

ルトの声だ。


「まだ寝てるんですかー? もう第七刻(午後二時頃)を過ぎていますよー」


アスラはのそのそと起き上がって、一度あくびをする。

それから、「ルト、入れば?」と、まだ眠たげな声で扉の外のルトに言った。


失礼します、と言いながら入ってきたルトから水を受け取って飲むと、意識がいくぶんか覚醒した。


「こんなに寝たら、今夜は眠れなくなってしまいますね」


 呆れ気味に言ったルトに、礼とともに杯を返して、

「じゃあ、いつもより多めに暴れて疲れを溜めておく」

と、アスラは悪戯っぽく笑った。


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