アルマクと幻夜の月



「王の崩御を狙っているのか?」


イフリートが言ったが、アスラは即座に首を振った。


「酒を飲むのは妃が先なんだ。そういう決まりになっている」


まさか自殺をしようというのではないだろう。

あまりの不可解さに二人は黙り込んだ。


そのとき。


「姫様! アスラ姫様、いらっしゃいますか!?」


扉の外から、宮女の慌てたような声が呼んだ。


「いるぞ。どうしたんだ?」


隠れろ、とイフリートに目配せをして、アスラは答えた。

イフリートは黒い鼠の姿になって、寝台の下にサッと隠れる。

宮女が扉を開けて部屋に入って来たのは、その一瞬後だった。


< 81 / 282 >

この作品をシェア

pagetop