僕を止めてください 【小説】
そう言うと小島さんは僕を後ろ抱きに引きずって、ソファに座り込んだ。僕は自動的に小島さんの脚の間にスポッとはまった。
「あと1年切った。この間に逃げられたら、俺はまた自分に絶望するのを見ないで済む。出来ればお前から去ってくれたらいい、って。また一人でいられる…淋しいけど俺は自分が壊れてることから目を背けて生きていける…」
「それは…実験を中止したいってこと?」
「ああ…結果を見るのが怖くて震えてくる。奇跡なんか起きねぇって、独りになると俺の頭の中で何かが囁く。お前はずっと壊れたまんまだっ…てさ。いや壊れてるからじゃねぇかもしれねぇと…お前は生まれつきそういうヤツだったって…」
抱きしめられた両手から、小島さんの震えが伝わってきそうだった。そうだったよね。実験には条件があった。
(俺が耐えられるまでな…)
あの時埠頭でそう言ってたのはこのことだったのか、と。でも、と僕は思った。でも、なんて思ったことなかったのに。
「あの…恋人が高校生になると気持ちが萎えるって、どんな感じなんですか?」
「えっ…?」
小島さんは心底驚いたような声を上げた。
「あ…なにか悪いことでも聞いたんでしょうか?」
「いや…お前にそんなふうに質問されるの初めてだからよ」
「はい。僕もそう思います」
「そうだよな…なんかどうかしたのか?」
「なんというか…実験の期間を伸ばしたほうがいいんじゃないかって思って」
「嫌だよ。もう終わらせたいくらいなのに」
「あのですね…色々推論に穴があるんです」
僕は説明を始めた。