僕を止めてください 【小説】
「違うって! だからさ! 熱と音! 体温上昇の不快感だよ! 結論…か? もしかして結論?」
「また自分だけで興奮する!」
寺岡さんの独り言を隆が何度目かたしなめている。寺岡さんはバッと隆の方を向いた。
「だって、これ裕君の発作の原因の可能性あるよ!?」
「まあそこだけどさ問題は!」
「でしょう? 自閉とかいいよ。もう。この固有の感覚をさ…そう、将に君の、固有の感覚だよ。ああ…そっか! それで自覚あったの? 君はさ!」
寺岡さんは興奮したまま、僕をいきなり指さして訊いてきた。
「自覚?」
「そうそう、自覚! 熱と音が共感覚でさ、温覚の過敏症でさ、そういうの、自分でよくよくわかってた?」
そう訊かれると、知ってはいたが、つながった全体像として把握してはいなかった。各々がバラバラで、つながりを持っているわけではなかったからだ。それはその時その時で単発のただの体験であって、無意識の方が比重が高かったと言えよう。だいたい、この体験自体が最近のものなのだから。混乱の中で起きたそれを、自分が到底そこに自覚的に分析できるような視点は無かったのだ。
「わかってない…かな。知ってはいたけど、こんな客観的な認識は無かったですかね」
「そう! それじゃさ、その不快感とか違和感が身体の問題でさ、生き死にとは関係ないとしたら、発作ってどう感じるかな?」
「え? どういうことですか?」
「あのねつまりね、君は生きてることと、騒音と熱が同じカテゴリーに入っちゃってるの」
「違うんですか?」
僕はまた、当たり前のことを言われて不思議な気分になった。