僕を止めてください 【小説】




「わかってたよ…クソッ…お前のほうが見えてんだよ裕のこと…俺はコイツを振り回し続けた…拒否んねぇのいいことに俺はコイツを好きにした。どうせ俺のことなんとも思ってねぇならこれくらいしたって構わねぇって…どっか思ってた…そうなんだよ…お前にはそれがわかってて、それでいつもそれの尻拭いして回りやがって」
「ああ…したさ…」
「どうせ俺はヘタレだよ。陰謀マニアのお前に言われたくねーけど俺は裕を何度も捨てようと思ったヘタレだよ。でもそれでいいんだよ。俺はコイツをどうにかしちまうだろ。おせーよな。もう、壊しちまったから…もう俺は近づかないほうが良いんだ」
「君が必要なんだ…今の裕君には」

 泣きそうな顔で寺岡さんが隆に言った。隆は苦笑した。

「俺もそう思ってた。でも今はどうかな…それは。こいつ、苦しがってる。俺見て苦しそうで…居たたまれねぇ」
「壊させない」

 それは小さかったが、とてもはっきりと耳に響いた。寺岡さんの目が怖いくらい隆を見据えいた。

「寺岡…」
「君に裕を壊させない。君が自分の激情を操れないんだったら替わりに私を殴ればいい」
「寺岡さん…どうして!」

 僕は叫んだ。何故そこまでしなきゃならない? だが、それを聞いて寺岡さんは僕を見て微笑んだ。

「言っただろう、裕君。私は聖人君子じゃないって。私は君のためじゃない、小島隆がこれ以上自分で自分を傷つけないようこの男を守りたいだけだ! だから私は君を壊すすべてのものから君を守る。君自身が君を傷つけるなら、私は君から君を守る」

 そして寺岡さんは微笑んだまま隆を見た。

「君は頭は悪いが、人を癒やす力を持ってる。なのに怒りっぽくてすぐ何かしでかす。癒して壊してじゃプラマイゼロだ。頭悪すぎる。そこいくと私はなにをどうすればいいかとてつもなく良くわかる。でも残念ながら君の持ってる力は私にはない。君が薬なら私は医者だ。裕がいつどこで君という薬を必要としてるか、私が君の用量を守って正しく投与してあげる。だから…そこの二人! 四の五の言ってないで、さっさと私の処方を守って早くどうにかしろ!!」

 そして寺岡さんは僕にツカツカと近寄り、僕のシャツの胸ぐらを両手で掴んだ。





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