僕を止めてください 【小説】




「うっ…」

 僕の中に軽い疼きとめまいが走った。それを佳彦は見逃さなかった。

「どうしたの? 感じちゃったの?」
「…はい」
「そんなだったっけ? そんなになっちゃったんだ。昨日? 小島に?」
「首絞められながら“殺したくなる”って…」
「それで感じちゃったの?」
「いつもより…早くイキました。でも…言われただけでこんな風になるって、今知りました」
「だめだよ…君さ…僕のこと誘ってるの?」
「そんなこと…ないです」
「なんなんだよ!」

 彼は忌々しそうに怒鳴った。

「小島のこと好きなんだろ?」
「…わかりません」
「抱かれてこんなになってんのに?」
「だって、佳彦に抱かれても同じです」
「ああ! そうだよね! ほんとにさ…殺したい」
「そうしたければ…いいですよ」

 彼は急に路肩に車を留めた。そして僕の首にいきなり両手の指を掛けた。力が入っていく。

「誘うなよ! 我慢してるって言ったでしょ? 僕は犯罪者になんかなるつもりはない!」
「くはっ…!」
「黙っててよ…もうこれ以上そそのかすなよ。悪魔…」

 彼はいつもの手際で僕を落とした。いつものように僕はイッた。




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