僕を止めてください 【小説】
頭の中が真っ白になるような意識の散乱と消退の中、オーガズムに突き飛ばされた僕の身体は、どこかへ落ちて行きそうな幻覚に見舞われていた。落下する感覚に耐え切れず、咄嗟に僕は手を伸ばし幸村さんの服のどこかを握っていた。
「お…落ちる…助け…」
「イッたのか?」
僕はその問いに無言で何度も頷いた。終わるんだ…これで全部終わったんだ。幸村さんが服を掴む僕の手首を掴んで、やんわりと外した。
「エロいな、相変わらず」
「し…知りま…せん…」
「終わったのか?」
「はい…もう大丈夫です…」
「ほんとに?」
「…ええ…ええ…ほんとに」
「へぇ」
突然手首を掴まれたままいきなりオナホが引きぬかれた。その衝撃でビクンと腰が跳ねた。
「うぐっ!」
「ほー。終わったのはどこの岡本君ですかね」
見ると幸村さんは握ったオナホを床に落としていた。そしてもう一方の手首も掴まれて、簡単に両手を顔の脇でベッドに押し付けられていた。
「立ってても終わってるんだな」
幸村さんは僕を見下ろしてニヤッと笑った。僕は慌てて自分の股間を見た。
「立っ…て…」
僕はそのあとを絶句した。
「オナホなんかでお前の身体が終わるかよ。馬鹿じゃねーの」
「終わります…もう終わってる…立ってるのはただの生理現象なだけですから…」
「じゃあもう感じねーんだな?」
幸村さんはいつものように僕の首筋に顔を埋めた。
「やめっ…んあっ!」
その途端下腹部がズキッと疼き、僕はよがり声を上げていた。背中が反り返り、唇と舌が首筋を嬲る淫らな感触に頭を左右に振り続けた。ああ…どういうことなの? なにも終わってない…なにも? なんで…なんで…どうして終わらない? 終わってくれない!?
大きな身体で乗られて両手を掴まれて身動きできないまま、どうしようも出来ずによがり続けることを止められない。自分の淫らな声を聴きながら、僕は自分の身体に再び絶望していた。ここまでの不毛過ぎる時間…すべてが無駄…無駄な行為と戦略…なぜ全部無駄になる…? まるで砂漠に水を撒くように…。三回…三回だ。三回自分で出しておきながらなぜ僕は終われない? 僕の身体は一体何を欲しがっている?
「はっ…はぁっ…はう…うう…」
「首筋嬲られただけで、そんなエロい声出して。ダメだなぁ。いつも通りダメな身体だな。努力が報われなくて可哀想になるぞ」
「言う…な…」
図星を指されて僕は耳を塞ぎたくなった。だが塞ごうにもその手はいまだ大きな手に掴まれたままベッドに押し付けられ、指先だけが捻くれて無力に宙を掻いていた。