僕を止めてください 【小説】



 掻き毟られた感情からの逃避なのか、佳境ばかりの長ったらしいエピソード集に疲れたのか、たぶんその両方で僕はそのあとすぐにまたウトウトとしていた。それは幸村さんも同じだった。

 そのあとも切れ切れに他愛もない質問や回答、例えば小島さんと寺岡さんのその後とか、小島さんと幸村さんが武闘系公務員であることが似てるなどをやや突っ込まれ気味に受け答えして時間が過ぎた。そのうちにまたしても幸村さんが自分の欲情に乗じて硬くなったアレを押し付けてきたり、僕の身体をいじくりまわしてきて、僕はそれを避けようと、無駄な抵抗を試みていた。

「ずっと…居ろよ」
「ええ、そのつもりですが」
「いつか落としてやる」
「殉職しますよ。色んな意味で」
「生意気言うな」

 そう言うと幸村さんが僕に覆いかぶさってきた。両手を掴まれて抵抗を阻止されて、その隙に唇を強制的に奪われる。これはもう止まれない感じだな、と、半ば諦めるしかない。

「時間が許す限り岡本率を上げとかないとな」

 耳元で囁かれる不穏な発言に戦いたのか身体が震えた。またしつこくいじり回されているうちに、終わったはずの狂乱の残響を引き出されてしまう。小島さんに犯されてもこんなことはなかったのに。

「ほら見ろ。感じるじゃね?」
「いや…だ…」
「声がエロいぞ。もうダメだろ」
「ダメです…いや、そのダメじゃなくて」
「じゃあ、どのダメだ?」
「しちゃダメのダメですってば」
「あーもー、岡本くん。この身体でそんな無理しちゃダメのダメだろ?」

 言われながら手でなぞりあげられた性器が硬くなっていて、僕は慌てた。

「ちっ違うんですって…これ、もっ…やめ」
「挿れて欲しいって顔してる」
「してない!」
「じゃあ、出して欲しいのか?」
「欲しくないから!」
「ほんとに?」

 そう言うと幸村さんは僕の固いものを手でいきなり握った。

「んあっ!」
「だめじゃん」
「やめて…」
「やめない」
「も…や…め」

 強くしごかれる度にそれが疼く。下腹部からゆっくりと広がる微熱が病気のように蔓延していく。微熱なのに痺れるようで、僕はその毒薬のような感覚におぞけた。



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