ビター・スウィート



夢を、見た。



それは、学ラン姿の俺とカーディガンとミニスカートという制服姿の花音のいる、もう十年近く前の記憶。

この前会った時とあまり変わらない顔に、少し短い髪をした花音。明るい笑顔を見せて笑うところが、好きだった。



二年近くの間の、長い片想い。けれど、言えなかった。

言って友達に戻れなくなることより、言わずに友達でいることを選んだんだ。

自分が後悔しないほうを、選んだつもりだった。



けれど花音は、ある日言った。



『裕と、付き合ってるの』



好きだった笑顔で、恥ずかしそうにもしながら、残酷なことを。当然気持ちは気付かれることなく、片想いは片想いのまま終わった。



笑う二人を見るたび、嬉しい気持ちもありながら、痛みのほうが強かった。

叶わない気持ちは、抱くだけ無駄だ。

だって、そうだろ。黙っていても叶わない。伝えても、困らせるだけ。そんな報われない気持ち、いらない。



だから永井にも、言ってやりたくなるんだ。お前の気持ちは叶うわけないんだから、諦めろ。可能性なんて、ない。

『無駄な気持ちなんてない』、なんてただの綺麗事だ。

“その時”永井は、きっと泣く。俺があの頃感じていた、痛い心を抱いて、無駄な気持ちもあるのだと知る。



だからこそ、諦めろと強く思うのに。




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