ビター・スウィート



「いてーな……なにすんだよ、花音」



じんじんとする背中にイラッとしながら振り向けば、そこにいたロングヘアの女・花音は「ふふ」と笑う。

その赤い頬から、少し飲んでいるのだろう。



「裕は?」

「中にいるよ。みんなもう酔っ払ってる」

「マジかよ……早ぇな」



酔っ払いの中に入っていくのか、面倒臭い……。

思わず足を進めるのを渋る俺に、花音は察するようにして微笑む。



「凌、ちょっと酔い覚まし付き合ってよ」

「へ?」

「ね、ちょっとだけ」



そう花音に手招かれるがまま行くと、花音は店を出てすぐのところに置いてあるベンチに腰をおろした。



「ま、座りたまえ内海くん」

「誰だよ」



その手がポンポンと示す彼女の隣に、少し距離をあけて座る。



「今日は彼女はつれてこなかったの?」

「は?」

「ほら、この前一緒にいたボブヘアの女の子」



『彼女』その言葉から想像できるのは、永井の姿。



「連れてくるかよ。つーか、彼女じゃねーって。ただの後輩」

「えー?ただの後輩と相合傘なんてしますかねぇ、ましてやあの人一倍警戒心の強い内海さんが〜」

「うるせーな!雨の日に傘がなければ相合傘くらいするだろ!!」



こうしてからかってくる花音に、怒る俺。この光景はあの頃と変わらない。


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