ビター・スウィート



「はい、では資料のほう郵送させていただきます。はい、失礼致します」



取引先との電話を終え、そっと受話器を置く。それと同時に部屋のドアがガチャリと開けられた。



「ちー、いる?」



『ちー』、そう私のあだ名を呼びながら室内を覗き込む、少しはねた癖のある茶髪の彼。白いシャツにグレーのスーツ、淡いグリーンのネクタイがとても爽やかだ。

彼は色素の薄い瞳を細め、にこにこと穏やかな笑顔で小さな段ボールを手にこちらへ足を踏み入れた。



「広瀬先輩!どうしたんですか?」

「商品のサンプル見て貰いたくてさ。今いい?」

「はいっ、どうぞ」



書類や電卓、ペンなどで散らかった自分のデスクの上を手早く片付けると、彼……広瀬先輩は「ありがと」、と笑いダンボールの中身をその場に広げた。


それはライトピンクやラベンダー、ミントグリーンの淡い色合いが可愛らしい花柄のシャーペンやペンケース、ノートなどの文具たち。

どれも可愛くも大人っぽく派手過ぎない色柄がとても印象的。



「可愛いー!すごい、華やかですねぇ」

「新作の花柄シリーズ。見た目はもちろん使い心地も重視で作ってみたんだけど……」

「あっ、本当だ。ペンの使い心地いいですね!でももうちょっと細身でもいいかもしれないです、手帳とかノートに挟む用とかに……」

「うんうん、ちょっと待ってね。ちーの意見参考にするのにメモとるから」



ボールペンを一本手にとり、試し書きをし感触と握り心地を確かめる私に、隣で先輩はノートを取り出しスラスラとメモをとり始める。


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