カルチャー
「そんなの知らないわよ!

帰りたければ彼女のところへ帰ればいいじゃないの!」

早口でまくし立てるように言った私に、上川は仕方がないと言うようにポケットに手を入れた。

そこから何かを取り出すと、差し出している私の手のうえに置いた。

合鍵だった。

私はそれをポケットに入れると、
「荷物は全部表に出しますから持って行ってください」

上川にそう言うと、その場から立ち去った。

「内山…」

上川が私に声をかけてきたけど、私はそれを無視した。

これでいい。

これでいいんだ。

上川は彼女とヨリを戻して、私から離れる。

だから、これでいいんだ。

だけど…私の心は、奇妙なモヤモヤ感に包まれていた。
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