キスから始まる方程式
◆届かぬ想い


「好きだよ、七瀬……」

「瀬戸君……?」



永遠に続きそうな暗闇の中、一本の街灯に照らされた瀬戸君の瞳に私が映る。



やがてその瞳がゆっくりと閉じられ



「……っ」



二人の唇が重なりあい、瀬戸君と初めてのキス。


それはとても甘い、極上のキスのはずなのだけれど……。



しだいに、私の眉間に深いしわが刻まれてゆく。



―― イヤ……



突然激しい嫌悪感にさいなまれ、おもわず拳をギュッと握りしめる。



けれど一度芽生えてしまった拒否反応は、もう自分ではどうすることもできない。


それでも懸命にこの苦痛に耐えていたのだけれど……



ドンッ



「やめてっ!」

「っ!?」



ついに我慢できなくなった私は、瀬戸君の胸を両手で力一杯突き飛ばし、ものすごい勢いでその場から逃げ出した。

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