キスから始まる方程式
◇幼なじみ……だろ?


カタン



う~ん……。やっぱり今日もない……。



朝から自分の下駄箱の中を覗き込み首を傾げる私。


私の誕生日から早一ヶ月という月日が流れたが、あの“くまんちゅマスコット”が入っていた日を境に、嫌がらせの紙切れはパタリとその姿を消した。



ようやく私への嫌がらせに飽きてくれたってことなのかな?



頬をポリポリと掻きながら上履きを取り出し床へと置く。


腰を屈めてそれを履くと、鞄に付けた例のくまんちゅマスコットが、私の動きに合わせてゆらゆらと可愛らしく揺れた。



「おっはよ~! 七瀬っ」



パタパタと愛らしい足音を立てながら、親友の麻優がいつもの天使スマイルで玄関から小走りにやって来た。



「んっ! おはよ麻優」



麻優の笑顔に癒されながら、私もニッコリと笑顔で挨拶を返す。



今日もいつもと同じ笑顔、いつもと変わらない挨拶、そしていつもと変わらない日常の始まり……。



けれどそれは本当に突然……何の前触れもなくやって来た。

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