キスから始まる方程式
◇真実と現実


――――――――
―――― ……



ここ……どこだろう……?



目の前に広がるのは、色彩の無い真っ白な世界。


見渡す限り塵ひとつ無く、音は失われてしまったかのように一切何も聞こえてこない。



私、どうしてこんなところにいるんだろう?

さっきまでいったい、何してたんだっけ……。



おぼろげな頭で懸命に考えるものの、一向に何も思い出すことが出来ない。


どうすることもできなくて、ただあてもなく歩き出す。


歩いて……歩いて……ただひたすら歩いて……。


歩き疲れた私は膝を抱えてその場に座り込み、うな垂れるようにして顔を伏せた。



なんで、誰もいないんだろう……。



そう思った途端、どうしようもない孤独感が私を包み込んだ。



どこに行けばみんなに会えるの?


―― “みんな”?


“みんな”って誰だっけ?



ザワリとしたものが、私の胸の中を駆け巡る。



みんな……。私の……大切な人達……。



「七瀬……」



その時、突然私の中に音が戻った。

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