ラベンダー荘(失くしたものが見つかる場所)
イチジクの恋人
 乾いた空の下。

 私たちはゆっくり足を進めている。

 負担にならないよう、私とかおりが背負ったのは小さなリュック。

 アキラはかばん一つ持たずに腰にペットボトルをぶら下げている。

「あっ、康孝さんだ」

 信也が登山道の下までおりてきた康孝に、手を上げた。

 見れば、信也は康孝とおそろいの大きなリュックを背負っている。

「おつかれさん」

 康孝は全員がやってくるのを待って口を開いた。

「ラベンダー荘からここまで、どのくらいだった?」

「約一時間ぐらい」

 康孝の問いにかおりが腕時計を見て答えた。

「いちお確認しておくが、まだまだ行けるね?」

「「「はいっ」」」
「無理」

 歩き出そうとした康孝は、気が抜けたように振り向いた。

「誰だ?今無理って言ったのは」

 信也が所在無げに手を上げる。

「かかと、靴擦れした」

「信也」

 かおりが信也の後ろから呼びかけた。

「靴ぬいで、こっちに足貸して」

 かおりは信也の靴下を軽くめくって、絆創膏を張る。

「かおり、用意いいね」

 私が感嘆の声を上げる中、康孝は満足そうに微笑んでいる。

「はい、これで痛みが少し和らぐはず」

「サンキュ」

「だらしね」

 アキラが言葉だけ残して、康孝とともに歩き出した。

「くっそぉ、まけねぇ」

 信也がその後を追う。

 私はかおりと歩いていく。


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