魔女の瞳
はじまりは15世紀頃のヨーロッパのとある国。

雪に覆われた深い森の中。

真冬の池。

岸近くには氷すら張っている。

その水中から私の夢は始まる。

「ぶはっ!!」

やっとの事で水面に顔を出した私は、大きく息を吸い込んだ。

何とか岸まで泳ぎ着き、両手で地面に捕まって…。

「う…」

池の中から這い上がろうとして、何かに足を引っ張られる。

「…信じられない…こんなの結び付けて沈める?普通…」

足の力だけで、それを水中から引きずり上げる。

…それは石だった。

いや、この大きさだと岩というのが正解かもしれない。

私の体よりも遥かに大きな岩がロープで縛られ、そのロープの端は私の両足に頑丈にくくりつけられている。

女の私に手加減も容赦もあったものじゃない。

私はほんの一時間前、この岩を足にくくりつけられたまま、この池に投げ込まれたのだ。

…そんな事したら死んでしまうじゃないかって?

そう。

私は殺された。

正確には処刑されたのだ。

溺死刑。

魔女裁判によって『魔女』の判決を下された者が辿る末路の一つがこれだった。

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