花の名は、ダリア

「あ… ありがと…」


反射的に手を出そうとした女は…

ダリアがはめているレザーのドレスグローブを見て。
それから身を屈めるダリアを見て、口を開けて数秒間固まって…


「とんでもありません、ミス!
お手が汚れてしまいます!」


慌てて手を引っ込め、勢いよくピョコンと立ち上がった。


「申し訳ありませんでした!
急いでいたもので…
あの… あの… おケガは…
申し訳ありませんでした、申し訳ありませんでした、申し訳ありませんでした─────!!」




声デカすぎ。
頭下げすぎ。

ちなみにケガをしている可能性があるのは、吹っ飛んで転がったおまえだよ。

あまりにもブンブン頭を下げすぎて、栗色の髪が乱れて香る。

ダリアは眉をひそめた。


「アナタ…
血の匂いがするわ。」


「あぁっ!!??
申し訳ありません!
臭くて申し訳ありませんー!!」


女はズザザと後退り、一際大きく頭を下げる。


「食肉工場で働いているもので…
お目障りでしょうし、すぐに消えます。
今すぐ消えます。
本当に申し訳ありませ…」

< 123 / 501 >

この作品をシェア

pagetop