花の名は、ダリア
Ⅳ
バイトってなんだ?
働いて、お金を稼ぐコトですよ?
もちろん。
海を越えての放浪には、金がかかる。
でも、誰かサンにスリスキルを伝授する気はナイし。
道端ホームレスライフなんて、もっとあり得ないし。
そんなこんなで、ソージは行く先々でバイトに勤しんでいる。
職場は主にベーカリー。
翌日に売るパンの仕込みをする、夜の仕事だ。
ダリアが言うンだよね。
『ソージの作るクロワッサンは絶品!』
なんてね。
そうでもないと思うケド。
ただ、ヴァンパイアになってから体温が低くて、指先の温度でパン生地を温めずにすんでるだけだと思うケド。
つまり、ダリアが作っても一緒だと思うケド…
ソレは内緒だ。
焼きたてのクロワッサンを持ち帰った時の、ダリアの愛らしいエクボを逃す手はない。
だが今回は、ソージはエクボをおあずけ。
ダリアはクロワッサンをおあずけ。
「…
本当によろしいンですか?」
「イイ加減しつけェよ。」
イーストエンドに着いた翌日、ソージはクララの案内で食肉工場の前に来ていた。
ちなみに今日は、紳士ファッションじゃない。
ステッキは持ってるケドね。