花の名は、ダリア

愛らしい声と共に玄関扉が開き、我輩の目に飛び込んできたのは…

妖精だ。

淡い金の髪。
抜けるような白い肌。
透き通る水色の瞳。

触れることも畏れ多い、美の女神の如き面差しと、手を伸ばさずにはいられない、官能的な肢体。

そしてその全てを覆う、危ういまでの儚さ…

妖精だ。
まさに『この世のモノとは思えない』。

好きだ。



いやいや、血迷うな。

ここまでの美しさなら、ヴァンパイアである疑いは濃厚だ。

我輩は高鳴る鼓動を押し殺し、胸の前で十字を切って微笑んだ。


「初めまして、お嬢さん。
私はこの町の教会の神父です。
礼拝にも見えられないので、こちらからご挨拶に伺いました。」


そう、今日の変装は聖職者。
ヴァンパイアならば、この首にかかった十字架を恐れるはずだ。

逃げる素振りを見せれば、疑惑は確定的。

心から勿体ないが、その豊かな胸に白木の杭を打ち込んでやろう。

どーだ?どーだ?

逃げるか…


「初めまして、神父さま。
そのロザリオ、とってもキレイね。」


…逃げねーよ。

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