花の名は、ダリア

率直な言葉は、時に残酷だ。

認めたくない事実が真っ直ぐ心に突き刺さり、そして抉る。

けれど…


「諦めてココを離れなさい。
この場所はまだドイツの支配下よ。
後少しで、アナタたちの敵は敗北する。
後少しで、アナタたちは自由になれる。
死んだ仲間たちのためにも、逃げ延びて新しい時代を生きなさい。」


率直な言葉はあたたかい。

包み隠さぬ優しさが真っ直ぐ心に突き刺さり、ぬくもりをくれる。


「…


教えてくれて、ありがとう。」


少年は、泣き笑いするように顔をクシャクシャにした。

こーゆー時、ダリアには敵わないな、とソージは思う。

自分なら、どんなに言葉を飾っても、少年を傷つけただろう。
もしかしたら、生きる意味さえ奪ってしまったかも知れない。

『うふふ、どういたしまして』
なんて少年に微笑みかけるダリアの頭には、子供を宥める大人の駆け引きや計算は一切ない。

彼女自身が、生まれたての赤ん坊のように無垢なのだから。

慈悲も無慈悲もありのまま。

痛いほどの純真。

穢れることなく永遠に咲き続ける、一輪の美しい花。

それがダリア。

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