花の名は、ダリア







あれ?
襲撃はまだ?

全神経を集中させたまま、待つこと数十秒。

ナニも起こらない。
森は静かで、ナニも聞こえない。


「…
動物じゃない?」


キョロキョロと辺りを見回しながら、デボラが小声で言った。


「…
そうかな?」


振り返ったヨシュアも、刀を下ろして小声で言った。

顔を見合わせて、同時に笑みをこぼす。

きっと、そうだ。

突然降って湧いた残酷な日常に翻弄されすぎて、過敏になっているンだ。

でも、それももう終わる。

失ったモノはあまりに大きいけれど、二人一緒なら、また築いていける。

なにげなく微笑みを交わしあえる、穏やかな日常を。

ヨシュアとデボラは再び手を取り合い、洞窟に向かって駆け出した。

なんとなくだケド。

洞窟の中には飲み物がある気がする。
齧りながら歩けるような、食べ物まである気がする。

用意周到で意外とお兄さん気質なダレかさんが、置いてってくれてるような気がすンだよね。

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