花の名は、ダリア

それで呆然自失となり、その後に始まった『ダリア先生のヴァンパイア講座』なんて茶番にも、付き合ってしまった。

反論もせず、大人しく聞き入ってしまった。

ダリアがそうである、『ノエル』とはなんなのか。

ソージと伯爵がそうである、『貴族』とはなんなのか。

『穢れし者』とはなんなのか。

そして…

自分たちがなろうとしている、『仕えし者』とはなんなのか…

信じていたコトを根底から覆す、恐ろしい話だった。

幸せなはずの『使徒の国』は、王と下僕しかいない国。

誰も王には逆らえない国。

実際にサ○ザーピラミッドの歯車を回せとは命じられないだろうが、そこに心の自由はない。

それも、永遠に。

地獄か。

そんなはずはない。
でも、もしかして?

嘘だ。
ナニが嘘?

信じてる。
信じられる?

疑問ばかりがグルグル頭を巡るのは…


(私が…
事実を何一つ知らないからだ…)


カオリのメガネのレンズを、一粒の雫が濡らした。

汗なのか、涙なのか。
それは、当のカオリにもわからない。

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